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2000/03/29
ぶるぅ日記 『闇』

−今日の天気は「くもりのち雨」、
 夕方から雷を伴った荒れ模様の天気となるでしょう−




予報通りに降り出した雨を、 あと数分遅れればアウトという ギリギリのタイミングで降られずに、俺は帰宅した。

真っ暗の部屋に電気をつける。




一息つく暇もなく唐突に訪れた、暗闇と静寂。




「ブレーカーが落ちた?」

唯一の明かりであるペンライトを持ち出して確認するが、落ちていない。 そもそも部屋の電気以外何も付けていなかったので、 ブレーカーが落ちるなんて事、あるハズが無いのだ。

つまり、これは…




停電。





ペンライトを取り出して外の様子をうかがうと、 日も落ちているのに明かりは付かず、マンションの非常灯以外が真っ暗となっている。 やはりこれは停電に間違いないようだ。


しかし外を見て分かったのだが、 どうやら全部が全部停電となっているのではなく、 電気の供給が「一部区画のみ停止」しているだけらしい。
道一本を隔てた向かいの家々には、普通に電気がついているのだ。




「暗い暗いィ! 天帝サマは暗いのがお嫌いだぁアアア!!」

あの明かりの地下ではドレイの如く発電器を回している人々が…

思わず涙。嘘。ファルコの涙はもう枯れている!



こっちは真っ暗闇だというのに、 平然と過ごしているであろう向かいの家々を思うと、 この闇がそうさせるのか、ブラックな(ていうかアホな)妄想が、 心の底からフツフツと沸いてくる。



「こっちが復旧する頃、テメーらは真っ暗になるがいいぜ!」



さらには呪いに似た挑発をかける始末。
もちろん外に聞こえないようにヒソヒソ声で。

(…嫌なヤツだな)

そして、そんな自分に自己嫌悪。




(あっ!)


右向かいのマンション(同じく停電している)の、 その真っ暗な部屋に、かすかだが懐中電灯らしき光の動くのが見えたのだ。

「停電仲間! 停電仲間!」

何故か嬉しくなってペンライトを振ってしまう。




停電なんて久しく体験していなかったので、 まるで 「8時だヨ全員集合」の停電ハプニングきどりで ワクワクもした。


だが、10分、20分と いくら待っても電気の付く気配がない状況に、 そんなテンションも次第にどんよりとしたものに変わっていく。




(腹が減ったなぁ…)


帰ってきた直後に停電となったため、まだ夕食は食べていなかった。

しかし電子レンジはもちろん動かないし、 モーターが止まってるためか水道の出も悪い。 停電が回復するまでは冷蔵庫を開け閉めするのもマズイ。 缶詰は「サバの味噌煮」だけ。

食べ物が、何もない。

…いや待て! そうだ、唯一の食料があった!




『うまい棒』




ペンライトを蛍光灯のヒモにくくりつけ、簡易の電灯にする。 その惨めで頼りない光だけが揺らめく薄暗い部屋に、銀色の包装紙がテラテラと反射する。

そして、冷蔵庫のモーターの音すらしない部屋で、 むしゃむしゃと『うまい棒』を頬ばる男。




チョコ味、おいしかったよ。


てりやきバーガー味も、おいしかったよ。




あまりにも自分が惨めすぎるので、ここで食うのを止めた。

それでも電気は、まだ付いてはくれない。




(滅)




すっかり「ぶるぅ」だ。

…ぶるぅ? …はっ! これは恰好のホームページのネタじゃあないか!

そう考えるだけで、落ち込んだ気分が一気に反転する。


「こんな体験…めったにできるもんじゃあないよ…
 グフフフ…と…得したなあ…」

そうだ、「岸辺露伴(JOJO35巻)」精神だ!




しかし、その元気もあまり長続きはしなかった。 そもそもネタになろーがなかろーが、 「電気がつかない」という現実に変わりはなく、 この真っ暗な部屋では、 本当に「うまい棒を食べる」くらいしか、何もする事はないのだから。



「ミジメナオレヲワラウガイイサ!」


そのまま ふて寝。






結局、電気がついたのは、停電から約1時間後のことだった。



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