2000/08/22
ぶるぅ日記 『夏目漱石だったモノ』
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合計金額をレジの女性店員が告げ、
その買ったモノを店員がコンビニ袋に入れてくれている間に、
俺は千円札を取り出してカウンターに置いた。
ただのコンビニでの買い物だった。
ここまでは。
『!!?』
たった今自分が置いた千円札を見て俺はギョッとした。
それは間違いなく本物の千円札だった。
だが、そこに描かれた夏目漱石は、もはや夏目漱石ではなかった。
■目ん玉キラキラ
■髭モジャモジャ
■透かしの辺りには ひらがなで「な」「つ」「め」の3文字
■その3文字から髭モジャの夏目漱石まで矢印が(ふりがならしい)
小学生が教科書などでやる「人物写真への落書き」、それが、
たった今俺が差し出した紙幣に、もう
これでもかと言わんばかりにされていたのだ。
っつーかドコのガキだよ、お札に落書きなんてアホな事しやがったのは! わざわざ読み仮名なんぞふらなくても読めるっちゅうんじゃボケェッ!!
しっかしなんでまたこんなのが俺の財布に紛れ込んでやがるんだ、あーあ、使う方の身にもなってみやがれってんだ、ったく…
……ちょっとまて、これって普通に使えるのだろうか? ここまで酷い落書きされてると、ひょっとして使えなかったりして…
…… いや、落書きされているとはいえ、普通の紙幣なのだから別に問題無いハズ、それに前の持ち主が普通に使ってたから俺の手元にあるんだし ……
…でも……ハ、ハズカシイぞこれはッ! 店員にも変な目で見られたりするのでは?
…あぁ、なんか嫌な気分になってきた…
幸いにも店員はまだ袋詰めの最中、この紙幣の異変には気付いてないようだし、 今のウチに別のマトモな千円札と変えるべきか?
…でもいったん出した札を引っ込めるのもなんかバツが悪いし、それにこんな落書き紙幣と知ったからには、俺もとっとと使って手元から無くしたいのが本音……
… やはりここは知らぬフリを決め込んで出しきるかッ! それに、ひょっとして店員に気付かれないかもしれないし……
… でも…あぁ、やっぱり気付くよなぁこんなバカな落書き……
… いや、気付くだけならまだしも、ひょっとして 「あのー、これって使えるんでしょうかぁ?」と店長を呼んだりしてそれでゴチャゴチャ言われたらメチャ最悪だ……
… ああああ、どうしよう! どうしよう! どうしよう!
…って、 ナァアアアッ!!!
俺の心の中での激しい葛藤など全く気付いていない店員は、カウンターに置かれた「怪しさ炸裂の夏目漱石」をサッと掴み取ると、チラッと確かめてからそのままレジの上にマグネットで挟んで固定。そして…
「○○円のお釣りです。」
全くのノーリアクションでした、この店員さん。
「笑いを取れなかった若手お笑い芸人って、いつもこんな気持ちを味わっているんだろうか?」
何だか少し悔しいような気分で、俺はコンビニを後にした。
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