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2000/12/18
ぶるぅ日記 『林檎』

久しぶりに「リンゴ」を買った。

リンゴなんて別に何てことない果物だが、「剥くのがめんどくさい」この理由だけで、 俺はリンゴを買うことは滅多にしない。 しかしこの時は、たまたまスーパーの特売品だったのか、 普段より目に付きやすいところにリンゴが売られていて、 しかも1個100円という安さ(と言っても元々こんな値段なのかもしれないが)。 とにかく無性にリンゴが食べたくなったのだ。

形が歪なものがヤケに多かったが、面倒だし正直よく分からないので、ロクに選ぶことなく、とりあえず手に取った2個を買ってみた。



夕食の後、早速そのリンゴを食べる事にした。 1つを手に取り、果物ナイフで皮を剥く。形が歪でやたら剥きづらかったが 何とか全ての皮を取り払い、そしてリンゴを真っ二つにする。


バスン!


しかし、分断され左右にゴロリと転がったそのリンゴを見て、唖然となる。





「腐ってやがる…」





中央からジワッと、シミのようなものが広がっている。 リンゴの中央は完全にシミで覆われていて、 さらに遠い場所にも斑点のようなものが見られる。

かなりカチンと来た。 せっかく食後の楽しみにと食べようとしたリンゴが、 たった一刀で、それが腐ったシロモノだと知ってしまったのだ。 今すぐにでも買ったスーパーに文句を言いに行きたい気分だ。

しかし、100円。 「安かろう悪かろう」という言葉もあるし、 それにこのリンゴ、形がかなり歪だった。

(そうだ、もう1つのリンゴも切ってみよう。)

さっきのよりは随分マシな形をしている、2つ目のリンゴ。
今度は皮を剥かず、いきなり分断する。



バスン!
    「あぁ…」



もう、瞬間にため息が漏れた。
そのリンゴもまた、さっきのと同じように 中心から変色してしまっていたのだ。




2つ買って2つとも腐っていた。

100円でしかも腐っているとはいえ 全て捨てるのはもったいない。 せめて食べられそうな部分だけ食べようと、中心の変色部分をバッサリと切り落とすが、 そうするとリンゴは もう半分ほどしか残っていない。

剥いてから時間が経ち過ぎてすっかり変色してしまった、 食欲を全くそそらないマズそうな果実の「断片」をほおばりながら、 ムカッ腹と失望と共に、それを飲み込んでいった。


食後、大幅に実の残った残骸を投げ入れたゴミ箱から漂う、リンゴの甘い香りがとても切なく、悲しかった。






その翌日、 「蜜入りリンゴ」というものを知った。



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