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2002/12/27
荒木飛呂彦先生のカルト漫画『ゴージャス☆アイリン』

はじめまして。ぼくの名はエンポリオ。詳しい経緯は省くけれど、 『ストーンオーシャン』で大活躍中の物知り少年だよ。 今日のネタはシャトレーゼに代わって、このぼくが書くことになった(アナスイもいるけど)。 どうやら「バーチャルネットアイドル」のようなキャラ立て手法を 使ってみたくなったって事らしいけど、別に深い意味はないんだって。 とにかく今回だけ、よろしくね。やっぱシャバは違うなあ〜〜〜。


2002年の12月19日に発売された「ウルトラジャンプ」って雑誌の1月号で、 荒木飛呂彦先生の描き下ろしピンナップが付いてたんだけど、コレ、もう知ってるよね。

「か………カワイイ…………おお……なんてカワイイんだろう…
 徐倫が……スタンドに抱きかかえられている…俺の下のスタンドが(以下略)」


ちょっとアナスイ、何ブツブツ言ってんだい?  こんなキモい奴はほっといて、 問題はこの「裏」に描かれた、もう1つのイラストについてなんだ。

とある掲示板には 「ゴージャス☆アニキン?」なんて書かれてたけど、 エルメェスじゃあないよ、たしかに似ているけど別の人だよ。 このサンプル画像からだとちょっと分からないけど、 左下にはこう書かれているんだ。

IRENE from GORGEOUS☆IRENE

このイラストの女性は、荒木先生が「ジョジョ」の連載前に、 読み切りで描かれた漫画『ゴージャス☆アイリン』の主人公「アイリン」なんだって。 「ジョリーン」と「アイリーン」ってわけ。 でも、先生自身”けっこうマイったよ。昔の絵はもう描けない”って公言されてるくらいで、この女性は「アイリン」じゃあなくて「アイリーン」という別人と見たほうがいいみたい。

ところでさ、その『ゴージャス☆アイリン』ってどんな漫画なのか、やっぱ気になるよね。だからぼくが『幽霊のコンピュータ』で調べてみたところによると…。

『ゴージャス☆アイリン』は、1985年と1986年に発表された、全2話の読み切り作品で、 主人公やその敵までも「女性」なんだ。 要するに、今連載中の『ストーンオーシャン』よりずっと以前に、荒木先生は女性を主人公とした漫画を描かれてたってわけよ。

これは『バオー』の延長線上にあって、肉体をテーマにした作品の女性版ですね。

これは「JOJO A-GO!GO!」という凶器にも使える本での、荒木先生のコメント。 『バオー』と言えば、寄生生物を植え付けられた青年「育郎」が、バルバルバル!と超人「バオー」に変身、悪の組織と戦うSFアクション。そんな作品の延長線上にあって、しかも女性版っていえば…、どれだけスゴイことになってるか、わかるでしょ?


ゴゴゴゴゴゴ…


「ゴージャス☆アイリン」 大女の館の巻

彼女は嘘をつく 自分の体で―――
頭で考え出した―――
背景の嘘なんかよりは巧みに―――
(ジャン・コクトー)

物語の始まりは、立派な屋敷の中から聞こえてくる物騒な音。 縛り上げられてサンドバックにされ、血ヘドを吐いて泣きを入れてるボロボロの男、その顔にツバを吐き掛ける女達。そして、そいつらのボスが…。

大女ローパー

老婆が小さいんじゃあないよ、女が化け物サイズなんだよ。
「北斗の拳」に出てきそうな化け物だけど核戦争後じゃあないよ、現代だよ。

猫をまるでハムスターか何かのようにつまみ上げてしまう大女「ローパー」。 エルメェスAAも裸足で逃げ出す凶悪な面してるこの女は、 犯罪組織のボス。そして裏切りを避けるために部下も全員女性…なんだけど、老婆はともかく、戦闘員達はラバー拘束具やボールギャグを身につけたSMファッション。荒木先生は一体何を参考にしたんだろう…。

それでこの大女ローパーの殺害を依頼された「殺し屋」が、 主人公の「アイリン」ってわけ。

すっぴんアイリン

断っとくけど、アイリンは大女じゃあないよ、下にある人形は普通のサイズだよ。

「胸はペチャンコ」 「いつもボーッとしてるけど」 「カワイイ子」 「ほっておけないよなあ」なんて、級友達のちょっとワザとらしいセリフもあるけど、とても殺し屋には見えない、ただの女の子。でも、アイリンってとっても暗示にかかりやすい性格でさ、顔に付いた泥がたまたま「涙を流す」形ってだけでも、ポロポロ涙をこぼしてしまう特異体質なんだ。

そして、忘れちゃあいけない。この漫画が ”『バオー』の延長線上にあって、肉体をテーマにした作品” だって事を。

彼女は『化粧』をすると…………
性格が変わる……

メイクによって『別人の性格』がもてる『少女』なのだ

『変装』では…………ない…ぞ
彼女はなりきってしまうのだ!
恐怖が一夜にして人を老人にするように
彼女の精神は自分の肉体をも微妙に変えるぞ!

「戦いのメイク! スキンスタート!」
ああん! あっあっあっふふう〜〜〜〜〜ん!←髪が伸びる
「(ガキッ…シュン)」←指が伸びる
ア〜〜〜〜〜ン(モコモコモコ…バリ)」←胸が膨らんで服が裂ける
「(ピン)」←足 「(パン)」←尻

ゴージャス・アイリン!

育郎が「バオー」に変身したように、アイリンは戦いのメイクによって、完璧のプロポーションと残忍な殺し屋の性格を持つ女「ゴージャス・アイリン」に(微妙に)変身するんだッ! ちなみにさっき大女ローパーの横にいた老婆も、アイリンが(微妙に)化けた姿なんだよ。 化粧で変身するといえば、アイリンのずっと後に、同じジャンプで『画−ROW』って漫画があったよね。10週どころか9週で打ち切られたけど…。

そしてこの二人が死闘を繰り広げるわけなんだけどさ、ス…スゴイんだッ!

戦闘員が全滅させられた事より、 大切な肌を傷つけられた事を怒るタイプのローパー(ハート様と同じ一族かな?)は、使い方次第で神をも一刀両断するという究極武器「チェーンソー」で襲いかかる。 対するアイリンは、『死の舞踏』という怪しげなダンシング。屈伸運動(擬音が何故か「オォーン」)したり、いきなり服を脱いで下着姿になったり…よく分からないけど、チェーンソーをスイスイ避けちゃうんだ。 でも足を取られて転倒、チェーンソーがアイリンに振り下ろされるゥゥ―――!!

アイリン、チェーンソー白刃取りしちゃった…。

この時、ローパーの「ヌウ! どこにそんな力が!? 排気量四〇〇cc、重量八〇kgのチェーン・ソーの白刃、よくぞ受けた!!」という熱いセリフに、ちょっとだけローパーがカッコよく見えちゃったのは、ぼくだけじゃあないよね、きっと。

チェーンソーを両手でかろうじて止めているアイリンにトドメを刺そうと、ただでさえマッシヴな体に、更に力を込めるローパー(この時の擬音は「グモ グモ グモ」)。さすがのアイリンも足腰がガタガタ…。危ないッ! チェーンソーが胸の辺りに…え? あああぁッ!!

チラリ

プル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ン !!

ウオオオオオ

ウォオオオ━━━━━━(´Д`)━━━━━━オエ…

ぼくの心は今、死骸のたまる深い湖の底のように、濁っているよ…。

「ジョジョ」でも、 37巻179ページの山岸由花子、 52巻91ページのトリッシュで、かなり微妙なシーンはあったけど、 モロに描かれてるのはこの「ゴージャス☆アイリン」だけなんだ。 だからといって、こんなんじゃあエルメェスにパンティ貰うのと同じじゃん! 最悪だよ!

この後は、 ローパーの「口から出すとナイフのように固まる特殊ガム(擬音は「パウッ」)」の攻撃を、さっきの変な踊りによる催眠効果発動でかわしたアイリンが、もはや自分の意志では指一本動かせないローパーを催眠術で操って…そして自らを…そのチェーンソーで…

わたし……残酷ですわよ

最後は神と同じ末路なわけよ。



たった1話だけの紹介なのに、スゴイことになっちゃったけど、分かってくれた?
ちなみに第2話「スラム街に来た少女の巻」は、敵は相変わらず人間を超越した女だけど、それだけじゃあなくて、ジョナサン・ジョースターそっくりのお兄さんまで出てくるんだ。

そりゃあそうさ、だって、

−読者の反応はどうでした?

荒木:良かったですよ。だから『アイリン』を週刊連載にしようっていう話も あったんだけど、でも「女の子を描くのは難しいなー」と自分で思ったんで、 2回でやめちゃいました。担当の編集者には起こられたけど、 「実はコレがあるんですよー」って『ジョジョ』を持っていったんです(笑)。


アイリンの変わりに始まったのが、あの『ジョジョの奇妙な冒険』なんだから。

そしてもし『ジョジョ』1巻を持っているなら、1話目でディオが読んでる本も、よく見てみるといいよ。スゴイ持ち方してるその本に、”GORGEOUS IRENE”って書いてあるから。


ところで、『アイリン』についての荒木先生のコメントは、こう終わってるんだ。

アメリカなんかだと作品を他人に譲るってのがあるでしょ。 『アイリン』も譲るから誰か続編描いてよー(笑)。

ぼく、梅澤春人先生による『ゴージャス☆アイリン』を、読んでみたいなぁ〜〜〜
(この答えはウソ。エンポリオは鬼窪浩久先生のエロエロなアイリンを読みたがっている)


エンポリオ11歳(アナスイもいるけど) −おわり−



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