ジャイロ・ツェペリの「鉄球の回転」は再現可能なのか? 『空想科学研究所』の柳田理科雄氏が答える

『空想科学読本』シリーズ[AA]を著書に持つ、「空想科学研究所」の柳田理科雄氏が、全国の高校図書館向けにFAX配信している『空想科学 図書館通信』で、ジャイロの「鉄球」が取り上げられていたとの事。

掲載されたのは2008年2月12日号で、質問は「『スティール・ボール・ラン』でジャイロが使う特殊技術「鉄球の回転」は再現可能なのでしょうか?」。柳田氏は、エネルギー保存の法則に従うなら、ジャイロは体の熱を球の回転エネルギーに変えていたのでは?と仮定。必要なエネルギーを、鉄球のサイズを直径7cm、重さ1.4kgで計算し、こう結論付けている。

人間の手のひらは0.24W程度の熱を出している。そして、熱が運動エネルギーに変わる比率は、熱源と周囲の温度によって決まる。ジャイロの体温を36.5度、気温を20度とすると、5.3%だ。このエネルギーで鉄球を回すと、その回転数は1秒後に毎秒8回転というペースで増えていく。
実際に、ジャイロの鉄球はどれほどの回転をしていたのか。漫画で確認すると、ジャイロは鉄球を投げるとき、腕を振っていない。鉄球は手のひらから勝手に飛んでいくのだ。おそらく、手のひらを転がる勢いで飛び出していくのだろう。あるコマでの軌道から、鉄球の速度は時速100km前後とみられる。直径7cmの球がこの速度で転がる回転数とは毎秒130回。この回転数に達するのは、4時間40分後である。案外気の長い技だということになる。

また、1st.STAGEでウルムド・アブドゥルを自滅させた、「粉塵で障害物の向こうの景色を描き出す」技も取り上げ、超音波エコーと同じ原理と仮定。

だが、その画像があまりに鮮明。サボテンのトゲまでクッキリと再現している。超音波エコーの画像はぼやけているが、これは超音波の波長が光の波長より長いため。サボテンのトゲまで活写するからには、鉄球が放つ超音波は、波長が可視光線と同じくらいだったはず。その波長とは1万分の5mm前後。超音波エコーの数十分の1だ。
さらに粉塵の直径も、可視光線の波長と同程度でなければならない。岩を粉砕するエネルギーは、粉砕後の粒が細かいほど大きくなる。鉄球は直径の半分ほどまで岩に潜り込んでいた。この岩が花崗岩だとすると、それだけの体積を直径1万分の5mmの粉塵にするには、鉄球は毎秒3800回転しなければならない。このエネルギーを鉄球に蓄えるには180日を要する……。

「黄金の回転」や、ウェカピポの「壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)」、左半身失調症など、『SBR』の世界にはまだまだ不思議な「技術(ワザ)」が溢れている。

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(情報グラッツェ!<さつきさん、ペドロさん、名無しさん)