英国のサンドマン! マラソンレースで「人間」が「馬」に勝利

レース風景
『必要ない。この脚のみで大陸を横断して優勝する』 そう言ってサンドマンは、乗馬によるアメリカ大陸横断レースに、馬には乗らず生身の「人間」として出場し、ファーストステージでは馬と対等か、それ以上の「走り」を見せつけたのだった…。これは荒木飛呂彦の人気漫画「スティール・ボール・ラン」での出来事だ。しかし人が馬に勝つ可能性を、”ファンタジーやメルヘン”の一言で片づけるのは早計かもしれない。現実に、「馬」に勝利したランナーが、現れたのだから。

英国ウェールズ中部の原野で毎年開かれているのが、山あり川ありの22マイル(約35Km)を、「人間」と「馬」が競い合うマラソンレース「Man v Horse Marathon」だ。あるパブでの酔っぱらい同士の会話から始まったという、この奇妙で無謀なレースは、やはり当然のことながら、これまで全て「馬」側の勝利に終わってきた。


このレースの面白いルールとして、「馬」が勝った年は、賞金が翌年に持ち越されてしまう。過去24回全ての敗北により、25回目となる今年の優勝賞金は、『25000ポンド(約513万円)』にまで膨れ上がっていた。500万円だッ! 「スティール・ボール・ラン」ファーストステージの優勝者に支払われたボーナス金『1万ドル(約120万円)』を遙かに超える金額だ。


そして2004年6月12日。馬47頭、人間566人(馬の扮装をした人間含む)が参加した、一大レースを制したのは、馬…のように長い顔と手足だが「人間」の、ヒュー・ロブさん(27)。彼はインディアンの末裔でもないし、過激なショートカットもしなかったが、その鍛えられた『脚』で着実にコースを走り抜け、最終的には馬を2分以上も突き放す、2時間5分19秒という成績で、見事優勝してみせたのだ(彼は本大会初出場だが、他のマラソン大会でも数々の優秀な成績を残している)。

『大地の俊足』ヒュー・ロブさんは、歴史的勝利に沸く中で、優勝賞金500万円の使い道について、こう答えたという。「賞金はまず、そこそこのトレーニングシューズを買うのに使うよ」。どこかマイペースな彼は、やはり本物の「サンドマン」なのかもしれない。

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