『ド低能がァ――ッ』 パンナコッタ・フーゴ魂の叫び、消える

追記(2008/11/16):遂に、ジャンプコミックスの方も、修正されてしまった模様。

最近やや落ち着いて、…というか、もめ事を起こしても疲れるだけだから、とりあえず従っておくかって風に定着して来たかな?という感じがする。少年漫画内の作画的表現に対する「自主規制」であるが――

集英社コミック文庫 ジョジョ30巻より、作者あとがき序文

パンナコッタ・フーゴ(ジョジョ5部)で印象深いシーンと言えば、多くの方が、初登場時に見せた、ナランチャに勉強を教えるシーンでの、ナランチャの頬にフォークを刺した後で言った、このセリフを思い出すだろう。

「このチンピラがオレをナメてんのかッ!
 何回教えりゃあ理解できんだコラァ!
 ろくご30ってやっておきながら
 なんで30より減るんだ、この……」
 

「ド低能がァ――ッ」
ジャンプコミックス ジョジョの奇妙な冒険 49巻、37Pより

他の仲間からの「あ~あ、切れた切れた、また」というセリフとも合わせて、”高い知性を持つが、外見に似合わぬ凶暴な一面もある。”というフーゴの性格がアリアリ伝わってくる名シーン。

だが、3月18日より刊行がスタートした、集英社コミック文庫 ジョジョの奇妙な冒険 Part 5では、このセリフが…、

 

クサレ脳ミソがァ――ッ」
集英社コミック文庫 ジョジョの奇妙な冒険 31巻、35Pより

何と、「ド低能がァ――ッ」というセリフが、文庫版では「クサレ脳ミソがァ――ッ」という全然違うセリフに差し替えられてしまったのだ!! フーゴのセリフ変更に伴い、この後のナランチャのセリフも、以下の通りに。

ジャンプコミックス版


JC版 ジョジョ49巻、35Pより
コミック文庫版


文庫版 ジョジョ31巻、35Pより

今回、コミック文庫版ジョジョ30巻で新たに書き下ろされた「作者あとがき」では、5部連載当時、荒木先生と編集部の間で起こった、漫画表現における「自主規制」に纏わる葛藤が(「編集部に対する批判ではない」と何度も断り書きを入れながら)綴られている。リアリティある「悪」の表現に対しての、編集部側からの度重なるページ修正の注文に、

そしてぼくは当時、『黄金の風』のテーマ性を表現するのに大きな危機感を感じ、表現の自由に制限が設けられたのでは?とか、漫画としての芸術的な発展がもうないのでは?とか、「権力」とか「利益追求」の思想が芸術の芽を抜き取ろうとしているのでは?とか、とても思い悩んだ。

集英社コミック文庫 ジョジョ30巻、作者あとがきより

とまで書かれている。

そして、このあとがきの序文には、「最近やや落ち着いて、…というか、もめ事を起こしても疲れるだけだから、とりあえず従っておくかって風に定着して来たかな?という感じがする。」とあった。今回のセリフ変更は、5部の文庫化に際し、「低脳」という言葉が「差別用語」に当たると編集部から指摘が入り、別のセリフに差し替えられたものと思われる。

…ただ、よりによって「クサレ脳ミソ」である。ジョジョ系読み物サイト「ゲス14歳」さんからも、「あんま変わらないような気がする…、というか、よけい酷い事を言っている気がしますが。とのツッコミが入った程。(この新ゼリフを見た編集部の、ニガ虫を潰したような顔が目に浮かぶ!?)

フーゴの代名詞とも言える「ド低能がァ――ッ」というセリフが無くなってしまったのはディ・モールト残念な事だが、この「クサレ脳ミソがァ――ッ」という新たなセリフを得た事によって、フーゴの凶暴性がより明確に表されるようになったと考えれば、これはこれで意外と悪くないの・か・も?

追記(2005/04/20):

質問
『ド低能』と『クサレ脳ミソ』、どちらの方が「酷い事言ってるー!」と感じましたか?
[投票期間] 05/04/17 ~ 05/04/20 [投票数] 971票
  1. 『ド低能がァ――ッ』(ジャンプコミックス版)

    17.2%
    (167票/17.2%)


  2. 『クサレ脳ミソがァ――ッ』(コミック文庫版)

    82.8%
    (804票/82.8%)

追記(2008/11/16):
このフーゴのセリフだが、遂にジャンプコミックス版でも修正されてしまった模様。
にぼしさんからのタレコミによると、コミックス49巻について、2007年10月21日発行の第37刷までは「ド低能がァ――ッ」だったが、2008年8月12日発行の第38刷からは、コミックスの方も、文庫版と同じ「クサレ脳ミソがァ――ッ」となっている、との事。

関連1 ジョジョ関連:

関連2 漫画における自主規制関連:

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文庫30巻
文庫31巻
 
コミックス49巻

5部連載当時の切実な思いが綴られた、文庫30巻の「作者あとがき」は、(立ち読みでも構わないので)是非読むベシ。そして、文庫で5部を読み始めた方は、コミックス49巻のフーゴも、機会があれば是非自身の目でチェックしてみて下さい。