先日、宇宙誕生の謎に関わる「素粒子」研究において、日本人の研究者3人が「ノーベル物理学賞」を受賞して話題となったが、毎日jpの記事に、「対称性の破れ」について、こんな「例え」が掲載されていた。
では「対称性の破れ」とは何か。南部氏はこう説明する。
「大勢の客が丸いテーブルにぎっしり着席している。各席の前には皿、ナイフ、フォーク、ナプキンが置いてあるが、左右どちらのナプキンが自分に属するかわからぬほど左右対称になっている。そのとき、だれか一人が右側のナプキンを取り上げれば他の客もそれにならい、とたんに対称性が自発的に破れてしまう」=「クォーク」(講談社)から。
そして次に紹介するのは、『スティール・ボール・ラン』 16巻で、ファニー・ヴァレンタイン大統領が行った、『聖なる遺体』に対する説明。
大統領「 たとえの話で…………
君はこのテーブルに座った時…
ナプキンが目の前にあるが…
君はどちら側のナプキンを手に取る?
向かって右か? 左か?」ルーシー「 普通は……「左」でしょうか」 大統領「 フム
………それも「正解」だ…
だがこの「社会」においては違う
「宇宙」においてもと言い換えていいだろう」ルーシー「 ………宇宙? ?」 大統領「
正解は『最初に取った者』に従う
…だ
誰かが最初に右のナプキンを取ったら
全員が「右」を
取らざるを得ない
もし左なら
全員が左側のナプキンだ
そうせざるを得ない
これが「社会」だ
……………」
大統領の発言の元ネタが、まさかこんな所からだったとは!
先に紹介した南部氏の例えは、98年に出版された「クォーク―素粒子物理はどこまで進んできたか (ブルーバックス)」南部 陽一郎[AA]からの引用なので、荒木先生もこの本か、関連する書籍を読まれたものと思われる。
そういえば、『KING (キング)』2008年3月号での康芳夫氏との対談で、荒木先生は、「善と悪の境界線」や「宇宙の究極」といった謎を追求し、それを作品で描いていきたいと仰っていた。
また昨年、荒木先生のイラストが米生物学誌「Cell(セル)」の表紙を飾ったことも記憶に新しい。
「荒木先生は作品に描くことであらゆる「謎」を追求する」、「専門家は研究理論によって謎の「答え」を求める」、つまり、ハサミ討ちの形になるッ!?
- 『KING』2008年3月号掲載、荒木先生と康芳夫氏との対談(前編)より
荒木: ただ、たとえば「善と悪の境界線」とか「宇宙の究極はどこだ」という「謎」を追求して作品を描いていきたいんですけど、それは「答え」を求めている、というのとは違うと思うんです。 康: 求めていない? 荒木: 「答えを示す」というよりは、絵で読者に「なんとか伝わればいい」というのかな? もちろん伝わるということは、辻褄がどこかで合っていないとダメなんです。理論的におかしいと突っ込まれちゃいますし。でも「答え」を求めるのは、その分野の専門家にお任せしたいんです。 -
『KING』2008年4月号掲載、荒木先生と康芳夫氏との対談(後編)より
荒木: 僕は、UFOを信じていないんですよ。(中略) たとえば「人類の起源が宇宙人だった」とか、「人は神が作った」という類の話はすごく嫌いなんです。やはり、生物学的にきちんと辻褄が合っていてほしいんですよ。(中略) それと、超能力的なものを「宗教の世界」で説明するのも嫌なんですよ。 「超ひも理論」は、たとえ嘘臭くても、理論で説明しようとする姿勢には賛成できるんです。少しでも「開拓しよう」という気概を感じるし…… 結局、僕が言いたいのは「人間讃歌」なんでしょうね。 - 荒木飛呂彦先生のイラストが、米生物学誌「Cell(セル)」の表紙に!!